街で君の唄を聞いた

此方も負けじと見つめていると、相手が先に口を開いた。



「……成る程。これはお告げ通りですね。私達も色々しなければなりませんね。クルト、戻りますよ」

「つまんなぁい。…また会おうね」



そういうと、二人は黒い渦に巻き込まれて消えていった。

一瞬の出来事みたいだった。
あたしは呆然と立ち尽くしたままで、一歩も歩こうとしなかった。



「…冷灯って、一人称“あたし”だよね?」

「あぁ、うん。それが?」

「さっき俺って言わなかった?」



…………………あれか!!
キレた時に思わず言っちまったんだ!

キレるとどうでもよくなって、何か、なんつーか、なんて言うか……うん、どうでもよくなるんだな。

まぁいいじゃんか。
別に女が俺って使っても問題ない。



「にしてもなぁ…」



お告げ通りって、何なんだろうか。
未来が分かる人でも居るんだろうか。

うーん、見てもらいたいものだ。



「見ない方が、いいんじゃない?」



何故か下からひょこっと現れたラグアスさん。
何故下から出てきたし。



「だって自分が直ぐ死ぬなんて言われたら、冷灯はどうよ?俺は聞きたかないけどね」

「それはそうだけども…」

「ホラ、そしたら見たいとか見てほしいとか思わない。もしも言って後悔しても、誰も責任とれないからな?」

「…うん」



まぁ、そりゃあ、そんな事は聞きたくないけども…。

ってかそんな事言われたら困る一方じゃんかよ。どうしようもねーよ。


…良いことだけ聞くっていうのは、駄目か?



「無し!」

「………はい」



きっぱりと、言われました。

駄目でした。



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