街で君の唄を聞いた



「それじゃー戻るか」

「お前足大丈夫なのか?」

「あれくらい何ともないって」

「…嘘だな。お顔が少し歪んでますよー?」



それに気付いてた。
少しだけ、ほんの少しだけ足を引きずってた事。

あたしのこの目は節穴じゃあない!…恐らく。



「ほら、手か何か預けろよ。辛いだろ?」

「……まぁ少し」

「はい無理しなーい。無理したら置いてくー」

「はいはい。じゃあ手でも預けようかな」









なんて言われたから手を貸しましたけど。


これ―――はたから見れば、手ぇ繋いでる様にしか見えなくね?

しくったあぁぁあ!!

今更ながら恥ずかしい!
いくらなんでもこれはねーよ!何であんな事言っちゃったんだ!?

馬鹿だ…馬鹿だった…。


絶対レザとかに見られたら、
“あーっ!!レイヒとラグアス、手ぇ繋いどるー!!ぅわっ、見せつけんなッ!”
…とか言いそう。
アイツなら言いかねない。

会わないことを願う。否、レザに限らず誰とも会わないことを願う。



「あ、レイヒちゃん」

「うわあああああよりによってコルクとかねーよぉぉぉお」

「…うん、俺嫌われるようなことしたっけ?」



はぁあ、と壮大な溜め息をつくかのように、且つ叫ぶように言い放った。
あー、コイツは言いふらすぞ。
何でヴィーノとかカヅムとかシェランじゃないんだよ。



「はいはい行きますよー」

「あっ、レイヒちゃんとラグアス!」

「ッギャ――――!言ったらぶっ殺す!殴り殺してやる!」

「まだ何も言ってないんやけど…」

「で、何?冷灯はほっといていいから」

「あ、あのな、ヴィーノがお前等の事呼んでんねん。ヴィーノの部屋に早う行ったって」

「わかった、直ぐ行く。ほら冷灯、行くよ」



あたしはぶつぶつ何か言ってたから、二人の話なんて一切聞いてなかった。

ぶつぶつ言ってたから、聞く余裕も無かった。



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