街で君の唄を聞いた



「レイヒ!」

「ぉわっ!?何々!?何が起きた!?」

「…起きた…。すっごく……魘されてた……」



魘されてた?
え、マジすか?ホントに?

うーん…でもあの夢、やけにリアルだったし…や、でも最後の方はよくわからんかったけど。


………気分、悪くなってきた。



「悪いシェラン。朝食は要らないって言っといて。気分優れないからさ」

「うん……。無理、しないでね…」



こくりと頷くと同時に、返事をした。

飯美味いのに、勿体ないことしたな…。
あー…んー…何かそう思ったら腹減ってきた。

腹が鳴るのを防ぐべくさっさと部屋を出た。



「むぅ…」



やっぱり綺麗だな、お城。
流石大陸を納める人の城だよ…。

よくよく考えれば、国王じゃなくて大陸王だもんなぁ。全然規模が違う。

…ジュマルドは…うん、触れないでおこう。
敢えてちょっと触れるなら、どっちかっていうと国王にしか見えない。

だって、ねぇ?


コツリコツリ


誰も居ない廊下に、あたしの足音が響く。
この音は何となく好きかもしれない。


コッコッコッコッ


歩くスピードを速めると、また違った音がする。

不思議。そして複雑。

音はそんなものだろう。


コツリ コツリ


そしてあたししか居なかった廊下に、響く足音と―――威圧感。

ただ者ならぬ気配。
殺気と言うべきなのか、ただの威圧感なのか…。

音は前の方から聞こえる。

丁度前には二手に分かれられる道がある。
ここまでの距離は、客室用の部屋が沢山並ぶところで、今まで一本道だ。

後ろからは絶対に無い。

前から来る気配。
小走りをやめて、音を立てないようにゆっくりと歩く。


右角から人影が、ちらりと見えた。
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