街で君の唄を聞いた
忍者みたいに忍び足になれば、多分気付かれないだろう。
壁に身を寄せて、先を窺う。
サラリとした髪が見えた。
性別はまだ判らない。
鼻先まで見えれば―――
「何してんの」
「ッ!?」
ドサドサドサッ
「あ…悪ぃ。拾うの手伝う」
「いっ、いえ!悪いのは僕の方ですからっ…!」
さっきの威圧感は誰のだったのやら、と思うほどおっとりとした銀髪の人。
少し丸めな眼鏡をかけていて、目の色は赤い。まるで兎みたいだ。
あと顔文字で表すならば、
(´・ω・`)
に違いない。
だってホントにそんな顔してるし…。
落とした本を拾いながら盗み見る。
サラサラしてそうな髪だな…。
後ろの方で縛っているのか、あまり前には髪は流れていない。
「ほい。悪いな、ホント」
「いっ、いえいえ!僕の方が悪いので気にしないでください!」
「いや、悪いのあたしだし。ごめん。で、それ、何の本?」
「あっ、これは上級魔法の本です。僕…まだまだ未熟な魔導師なので、ここで勉強してるんです」
「上級で未熟なのかー…。あ、名前教えてなかったな。あたし冷灯。よろしく」
「僕はキニメル。よろしくね、レイヒ」
ニコリ。
丸めな眼鏡の奥にある目は、目尻を下ろしている。
優しそうな目だ。
ただ気になる。気になる事が一つあるんだ。
「じゃあな」
「うん」
キニメル、お前――――。
「――――…………………」