街で君の唄を聞いた

そんなわけで。



「え、徒歩?」

「だってここからそう遠くないし。半日しか歩かないけど?」

「ケロッと言うなよ…」

「何なら俺がさっきみたいに力使ってもいいけど?」

「危ないからやめろ」

「えー、すんごい楽なんだけどなー」



と言って、“ほら”と言うユレリアの隣には、光った楕円があった。
何それ。
まさかこれで行こうなんて事じゃないよな!?



「これ速度調節出来るし、何より座って行けるから楽だよ」

「何でさっき使わなかったんだよ!!」



う…わ。
何だろうこの脱力感。
非っ常に酷い。

座ってとか。
速度調節とか。
さっきのは一体何のために…。
絶対寿命縮んだ…。



「はーい、じゃあ乗ってー」



……この気紛れ野郎!










「あ」

「何?何かあったの?眼鏡君」

「(俺コイツと仲良くなれない気がする)村がある。よかった、多少は神子の事聞けるかもしれない」



…追い出されなければいいけど。
大抵神殿の近くにある村は、“神子を殺しに来た”“神子を攫いに来た”“神殿破壊者”という目で見られる。

眼鏡を外して、よく村を見る。
寝る以外に外したの久々だなー。

キュッと目を瞑って力をいれる。

鳥の鳴き声…村民の賑やかな声…風の音…。



「止まって」



神殿への道はほぼ真っ直ぐ。

ここらで茂みの音はありえない。
…彼処だな。



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