街で君の唄を聞いた

裾から小型ナイフを茂みに投げつける。
すると何かに当たったのか、キィン…と金属音が周りに広がった。



「むむ、村に入るなら容赦しないぞ!」



茂みからひょっこり出て来た男性…というより男の子。
しかし防具はしっかりしている物だ。

……成る程。



「君、あの神殿の近くにある村民でしょ?」

「なんっ、何で分かったんだ!!なななな何者だお前!」



動揺しすぎだなー。

ていうか分かったというか、読ませてもらっただけなんだけど。

そして“あっ…”と声をあげた男の子は、俺を指差してとても驚いた顔をした。



「お、お前等!あああ案内してや、やるから、つつ、ついて来い!」



あぁ、そうか。
この子月読族知ってるんだ。
さっきは俺に指差してとは思ったけど、正確にはこの左頬の方だろうな。

めっずらしーな。この歳で知ってるなんて。

まいいや。案内してくれるそうだし。



「!お、降ろせ!」

「これに乗って案内してもらうからねー。といっても、殆ど真っ直ぐだけど」



もう既に村は見えている。
別に案内してもらわなくてもいいんだけどね。

男の子は乗っているものに、疑いの眼差しをむけている。
そうそう見れるもんじゃないからな。
凝視するのも当然だ。


――何やら人の騒ぎ声が聞こえてくる。
何かあったんだろうか。



「…村が…!」



村は緑の炎で包まれていた。
村の後ろは森(神殿は森の中)だから、よく目を凝らさないとわからない。

しかし炎は徐々に消えてゆく。
…あの類は、術でも使わないと消えないはずなんだけど…。
一人は、使える奴が居るのか?
ユレリアに“急いで”と催促する。


ついた頃には、炎は消えていた。



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