街で君の唄を聞いた

「ありがとうございます!」

「やっぱり私達には貴方様がいらっしゃらないと…」



着いた時に聞こえる声。
救った人に対して言っているのか。

すると男の子は村の奥へと進んでしまった。



「神子様!」



走った先には、綺麗な金髪の女性。
男の子は“神子様”と言った。

あの人が―――月の神子。

俺はただ呆然と眺めていた。


金髪は細い糸のようなサラサラで。
肌は白く、少し垂れた目で。
神秘的な人だと思った。
透明な水のようで。

初めて、神秘的と呼ぶべき人物に出会った。



「神子様、この男の人、月読族なんだよ!」

「……神殿へ連れて行くわ。村の人々は、どうか村の復興で怪我をなさらずに…」



何もかも、透き通っている。

目を伏せてこちらへ向かってくる神子。
歩くだけでも、目を奪われる。

全員が神子に見とれている。
それ程目を引く人物だ。



「初めまして」

「は、初めまして…」

「そう堅くなさらないで下さい。神殿へ案内しますので、ついて来ていただけますか?」

「はい」



………読み取れない。
神子の心の内は、見えなかった。
本当に、純水。
だから何も見えなくて、対応のしがいが正直ない。
今までは見れてきたけどな。
だから“こいつはこういう性格なんだな”って思って話てた時が多いし。

やっぱり、神子なだけあって難しいのかもな。
初めての存在なんだし。

でも優しいんだろうな。
それだけは、周りから感じ取れる。

…まあ逆にそれを恨む奴はいるんだろうけど。



< 220 / 236 >

この作品をシェア

pagetop