街で君の唄を聞いた

「…真っ赤だな」

「真っ赤やね」

「真っ赤だねー」

「ご…ごめん」



見事なことに、ヴィーノの頬は、冷灯の手痕が綺麗に残っていた。
本人はとても痛そうに顔をしかめている。
+、しゃがみ込んでいる。
長いマントが床に着くほどに。

相当、痛かったんだろうな。



「ごごごごめんんんん!!」



冷灯は滅茶苦茶慌てふためいているけど、ヴィーノは微動だにしない。
何回も謝っているけど、聞こえてるのか聞こえてないのか判らない。



「…ふ。まさかお前に叩かれるなんて思ってなかったな」

「M?お前Mなの?」

「目が覚めた。礼を言う」

「(Mだ!コイツMだあああああ!!)」



話が噛み合ってないよ。
二人で会話を成り立たせてね。
冷灯…恐らくそっちの言葉なんだろうけど、言っても俺等には通用しないんだから、言っても無駄だと思うよ。


でも、ヴィーノ起きたね。

さっきと全然眼が違う。
よかった、ずっとこのままだったら、激しく困ってたよ。

“ありがとう”

“まぁ目ぇ覚めてなにより”

君等二人、もしかして天の邪鬼?
それとも照れてるだけ?



「ははっ」

「何やねん、ラグアス」

「いや…。あの二人って似てるよなー、って思って」

「せやなぁ。互いが互い、埋め尽くしてるとちゃう?」

「そうだな。あいつ等二人は、結構いいと思うよ。少なくとも俺はね」



本当。

羨ましい。

でも二人を見てると、結構微笑ましいんだからね?
そんな事、微塵も思ってるなんて考えてないだろーなー。



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