街で君の唄を聞いた
選ばれし者だって?
誰が?
クレイアさん、が?
いやいや、まさかな。
今のはきっと幻聴に過ぎないだろ。
俺もそろそろ耳掃除しないとな。
あー、でも竜で西大陸に来たんだっけ。
そういえばあの竜………紅かった気がするなー。
紅竜は神秘の象徴ともされてて、陽(アルヘリア)のものとされていて……………。
「疑いましたすいません」
「いーのよ。気にしてないし」
サラリと言ってしまうクレイアさんは、流石王女といえる。
「さ、歌ってもらおうかしら」
調重和歌(ハーデニンス)―――。
それは遠い昔、神が人々に捧げた、神歌(ゴルジオ)とも呼ばれていた歌だ。
神が人々に齎すその透き通る歌声は、救いの声とも称された。
譜面を見た時に見えた題名。
この歌は、その神が実際に使っていた第二楽章だと分かった。
まさかルーデルが持っているなんてな。
鳥怪族っていうのは、まだ解らない事が多すぎるな。
一人旅してた頃の時に色々学んだけど、鳥怪族は存在するかしていないかのどちらかだった。
この目で見たときは、一瞬嘘だと思った。
それが今や一緒に歌ってるぐらいだし。
不思議なもんだなー。
そんなこんなで歌が終われば、短剣が光りだした。
多分、宿ったんだろう。
「凄い…。本当に調和歌が宿るなんて…」
「あんた自分でそういう仕組みにしておきながら、そんな事言うの?全く。三人ともありがとう。今からお茶煎れてくるから、待っててね」
王女は、どうやらご機嫌になったようだ。
ご機嫌斜め、というわけじゃなかったけど。
きっとお父さんが戻ると思った(安心した)からだろうな。
うん、よかった。