街で君の唄を聞いた
随分と走って到着した、王室前。中からは異様な気配が漂う。
「入るわよ」とクレイアさんが言い、なんと足で扉を開けた。誰もが思ってなかったことだけに、俺達四人は目を丸くした。
「お父様!」
「おぉ…我が娘クレイア…。妙な輩を連れてきおって…。さ、早くその輩共から離れなさい。クレイアが汚れてしまうだろう」
「妙で汚れてしまうですって…!?本当変わったのね、お父様。目を覚ましたら如何!?」
「何を言う!変わったのはお前だクレイア!離れなければ私がその輩を始末してしまうぞ!いいのか!?」
「操られたお父様にそんなことは出来はしないわ!」
北大陸の王の体の周りに、異様なオーラが出ている。入る前に感じたのは、これか。
これは相当深く取り込まれているな。
一刻も早く解放して―――「あら、やっぱり貴方達だったのね」
「…リバルツ!!」
王座の後ろから、コツコツと音を鳴らして出てきたリバルツ。王の肩に手を置いて、口を不気味な三日月にした。
…そうか。リバルツが王を操っていたんだな。手を置いた途端、異様なオーラが一気に増した。原因は彼奴しか考えられない。
「少しでも隙間があれば、私はそこに漬け込むわ。呆気なかったわ」
「てめぇ…!ほんっと性悪だな!あの時といい、今といい!ムカつく!今いっっっちばんムカつく!」
「とか言っておいて、貴女私が斬れるの?」
「――――ッ」
「私知ってるのよ?貴女獣と戦う以外、人と戦う時は、剣を鞘から抜かないのよね。あちらの世界の住人はどれだけ呆けていたのかしら。笑えてくるわ」
そういえばそうだ。
冷灯は人と戦う時、剣を鞘から抜いたことが一度も無い。獣と戦う時は普通に抜くのに、盗賊とかとは抜いたことが無い。