街で君の唄を聞いた

飛び散る鮮血。

彼の血は汚れなき血だ。



『王…!』

『ハッ!ベルアーノ王は死んだ!やりまくれ!!近衛騎士を片っ端っから片付けろ!!』

『何だと!?貴様!もう何もしないと誓ったではないか!!』

『死んだ奴とどうやって契約を結んだと?』

『おのれ…!!』



神は…正義ある者を見放しはしない。



『クク…まぁいい。一番側にいたお前の目の前で今は亡きベルアーノ王の妻を殺してやるよ!おい!!』

『ニュシーラ様!?』

『お願い…タレス…。救って…』

『へっ。二人して偽善者になりやがって。きめーんだよ!』

『死んでも尚…貴方を永遠に愛しています…』



ザシュッ



『ニュシーラ様ぁぁぁあ!!』



王も、王女もいない。

いると考えられるのは、王女が産んだ兄妹。
生きているのであれば、他の大陸へ逃がしたい。
それが今の近衛騎士、タレスの願い。







後ろで何かが弾ける音がした。
思いっ切り振り向けば、ベルアーノ王が立っている。



『お…う?』

『ハッ!なぁーんだよ。寝たふりかよ!王の癖に汚ぇ手を使うんだな!』



何と、ベルアーノは心臓を刺されたのに、生きているではないか。



『条件を…破ったな…。妻を…殺したな…!?』



彼が生きている理由…。
それは神の血が微量だが、入っている。

…言わば彼は、神に近い。
そして、不死…。

彼は死にはしない。



『口で契約しただけなのに、破らない奴はいないだろ?』

『条件や契約は…破るために有るものではない…!』

『ぐぁっ!!』

『王!一旦休まれた方が…!』

『黙っていろ!!』



王は、切り刻む。
あの時のように。

親友を殺されたように、今度は妻を殺されたように。



男を切り刻む彼の姿は、実に滑稽…。
光なんてなかった。


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