街で君の唄を聞いた
荒れ狂う彼の姿は哀れ。
最初は国を襲った者達だけだったが、次第に見境なく住民まで殺していった。
彼を止めるとしても、ほんの数分だけ。
不死身の彼を誰も止めることができないでいた。
このままでは、ニュシーラ様が産んだご兄妹も…!!
そう思ったタレスは、その兄弟の元へと向かった。
『お二人方!ご無事でしたか!!』
裏ルートから行けば男共はいない、と瞬時に判断し、真っ先に部屋に。
運良く、何とも無いようだ。
『タレス?』
『急いで西大陸、ヒュレイドに向かいます!急いでください!時間がありません!!』
『待って!父上と母上は!?』
『ヘルディク様、ウメイラ様、西大陸に着きましたらお話致します。さあ急いで!』
『…タレス』
走った。
懸命に。
兄妹を守るべく、共に。
タレスはどこかで感じていたのかもしれない。
あの人は王ではなくなってしまっている、と。
荒れ狂うベルアーノ。
もう彼が暴れ出した後の街は、街ではなく、ただの廃虚と化していた。
ベルアーノ、彼は深い深い穴を掘り、自らを縛り付け、自ら眠った。
タレス達は西大陸に移動した後、タレスはヒュレイド王女に先程あったことを全て伝えた。
勿論、兄妹にも。
その場にいた、皆が泣いた。
あの、穏やかだったベルアーノが…こうなってしまったからだ。
それからはというものの、一年後、三人は東大陸へと戻った。
街の復刻、新しい王の誕生、新しき制度…。
三人は、力を合わせられる限り国の為に尽くした。
400年前の今日、悲劇の襲撃事件とはこの事だった。