街で君の唄を聞いた



あれからずっと、皆に見つからぬように捜していた。

一回だけ怪しまれたことはあったがな。



俺はアイツのためにも死ぬわけにはいかない。



バンッ



「コルク、夕刻までには兵を固めろ」

「何でやねん?」

「悲劇の襲撃事件が再発するからだ。封印はメレナとレザでやってもらう」

「流石冷静沈着野郎や。副騎士長に任せときぃ」

「お前も冷静沈着野郎だろうが。メレナに言ったら驚いていた」

「まぁメレナやからな。せや、レイヒちゃんはどうするん?」

「ジュマルドの所にいてもらう。後にルレイブにもいってもらう」

「二人とも魔力が高いとはいえ、女の子二人はキツいんじゃ?」

「少量の兵は置く。それにジュマルドだってまだ腕は鈍っていない筈だ」




ジュマルドは前回の戦争では、王の癖に俺より斬りつけていた。
急所は外していた。
そう考えると、やはりアイツは王なのだと実感させられる。



「わーった。それじゃ今から呼び集める。どこに呼び集めればええんや?」

「一つは地下二階。二つ目は城を囲め」

「いえっさー」

「頼むぞ」




時間はない。

一刻も早く、助けなければならない。





…あの影はなんだ…?


コツ コツ コツ コツ コツ



影は揺らいでいる。
恐らく布類の何かだろう。

少しずつ、少しずつ…。


チラリと見ると、緑色が見えた。
気配を消して、少しずつ近づいていく。
万が一のために件を片手に持つ。


あと少し。

あと少し。



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