街で君の唄を聞いた
「…誰だ貴様は」
剣の先を首もとにあてる。
すると一瞬肩があがり、か細い声で答えた。
「……………捜しに来た」
「誰を?」
「そう」
「捜している奴の名前は?」
「………言えない」
「俺も捜すの手伝うから。ホラ」
「まずは自分の名前でもいいかい?」
「あぁ。何ていうんだ?」
「フィレシア」
カラン カランカランカラン…
「どうしたの?」
「…捜している奴の名は?」
「ヴィーフェル=ノクラム」
コイツが、弟だというのか。
ついさっきまで、考えていた、弟だというのか…?
あまりにも呆気なく、あっさりと見つかるなんて、思ってもいなかった。
話が出来すぎる…。
「フィレシア」
「ん?」
「目の前の男が、ヴィーフェルだ。お前の、唯一の兄だ」
固まった。
此方を見ている彼の瞳は、揺らいでいる。
俺と同じ、眼が。
「兄貴は亡くなったのかと、てっきり…」
「俺もお前が亡くなったのかと思っていたが、やはり兄弟。互いにどこかで生きているのだと、信じていたのだな」
「兄…貴……」
するとわんわん泣き始めた。
まるで小さな子供が、躓いて泣いてしまったかのような光景。
…が。
「俺がそんな狭い通路にいると思うか?」
「居ません。兄貴の性格上いるわけがな…、って、ああぁ!!近衛騎士長の紋章!そんなに兄貴は強くなっちまったのか…」
「ははっ。お前は強くなったか?」
「魔導は日々鍛錬してきた!だから魔導だけだったら誰にも負けない気でいるけど…。兄貴が騎士長になっちまったんなら、話は別!もっと鍛えなきゃ!!」
「お前は強気の父さんに似ているな」