もう1人の彼氏
「お疲れ様。飲みに行こっか。」


そう声をかけてきたのは、仕事のパートナーである、1歳上の男の先輩。

朝6時から夜10時すぎまで、毎日机を並べて一緒に仕事をしている。

あーでもない、こーでもない、言い合ったり、

愚痴をこぼしあったり、

慰めてもらったり、

怒鳴られたり、

助けられたり、助けてあげたり…


先輩は、入社した時から総合職で、今までいろんな企画を立ち上げてきた人だし、何てったって東大卒だから超頭いい。

太刀打ちできるわけもない。

だけど、人に教えるのが、ものすごい下手。

聞き返すと、丁寧に教えてくれることもあれば、
「はっ?なんでこんなのも、わかんねーの?」とキレられることもある。

ムカつく。


正直、1歳上とは思えない老け顔だし、絶対彼女いないな、いつか仕返ししてやろうなんて思っていた。

今まで私に冷たくした男なんていなかったのにー…

いつか痛い目に合わせてやる。なんてね。


だけど日を追うごとに、息が合ってきて、
キレられたら、私も負けずに怒鳴り返すようになった。


そんな私と先輩のやりとりを見て、上司が
「ほんと、おまえら息がピッタリだよなぁ…。お互い、もっと早く出会っていたら良かったなぁ。そしたら絶対結婚しろって言ったのに。あぁ、今からでも遅くない、お前らまだ結婚してないんだ、お互い別れてお前ら2人が結婚しろ。」
なんて言ってくるようになった。


「そうしちゃいましょうかぁ〜?(笑)
アハハ〜。
じゃ、私、今日は結婚式の打ち合わせがあるので帰ります。
お先に失礼しまーす。」

「えっ?今日はもう帰るの?
飲みに行けないのか〜。
じゃあ、また明日な、お疲れ。
あ、残ってるレポート、やってこいよ。」


いつもは10時すぎまで仕事をして、その後、部の皆で飲みに行くんだけど、結婚式の打ち合わせの日は強引に定時に帰社してる。



結婚式をするホテルに向かいながら携帯を見ていたら………


【元気か?】


隆正からのメールだった…
< 2 / 113 >

この作品をシェア

pagetop