花の魔女
確かにフィオーレは花の精霊であって、力だってあるのだけれど……
「無理よ……怖いわ」
ナーベルが首を振って後ずさりすると、フィオーレはにこと微笑んだ。
「大丈夫ですわ。わたくしは絶対にケガなんかしませんわ。うまくかわしてみせますから」
フィオーレは手を広げ、いつでもどうぞという目でナーベルを見ている。
ナーベルはまだ怖いと思っていたが、師であるフィオーレのことを信じてやってみようと決めた。
ここで怖じ気づいていては先にも進めない。
「わかったわ。……行くわよ、フィオーレ」
「ええ」
微笑むフィオーレに、ナーベルは両の手のひらを向けた。
―――――風。
ナーベルの手と手の間から、渦巻いた空気のようなものが出現したかと思うと、それは渦をほどきながら真っ直ぐにフィオーレに向かっていく。
ゴォッと音をたてて、強い風はフィオーレを飲み込んでしまった。
このままではフィオーレが飛ばされてしまう!と、ナーベルはあわてて風を止めた。