花の魔女

その声に、ドニと呼ばれた男の子は顔を出し、ルッツを見て目を丸くした。


「ルッツさん!」


ドニはモニカの陰から飛び出すと、勢いよくルッツに抱きついた。

ルッツはドニの背丈に合わせてしゃがみこみ、小さな背中に手を回した。


「大きくなりましたね、ドニ。初めは誰だかわかりませんでしたよ。」


「当たり前です。僕、もうすぐ10歳になりますから。」


「何やってるのよ、ドニ!全く、いくつになっても甘えん坊なんだから!」


モニカはそう言いながらも、抱き合う二人を見て嬉しそうに笑っている。


まるで、長い間会うことのできなかった家族の再会のような光景に、ナーベルはますますわけがわからなくなってしまった。


「アナベラさん…、これは、一体どういうことなのでしょうか?」


アナベラに答えを求めようとしたが、アナベラは人差し指を口にあてて見せて、ただ黙って微笑むだけだった。


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