花の魔女

ルッツがようやくドニを離し、彼の頭を撫でながら立ち上がると、すみません、と頭を下げた。


「あまりにも嬉しくてつい、周りが見えなくなってしまいました。」


「いいのよ。さあ…、みんなに話してもらえるかしら?」


アナベラが微笑みながら促すと、ルッツは頷き、ドニとモニカに視線をやった。


「実はこの子たちは、私が育てたも同然なのです。」


ドニとモニカはニコニコとルッツを見上げている。


「そうなんです。私が5つ、ドニが3つのときに、さまよっていた私たち姉弟を引き取って、育ててくださいました。召使いとしての振る舞いを教えてくださったのもルッツさんです。私たちにとってルッツさんは、大切な父であり、先生でもあるんです。」


そうだったのか、とナーベルは感心して、改めて三人を見た。

嬉しそうな三人を見て、思わずこちらの表情もほころんでしまう。


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