花の魔女
「でも、どうしてドニを置いてきたの?モニカだけを連れてくるなんて……」
何か理由があるんだろうけどおかしいわ、とナーベルが尋ねると、モニカが首を大きく横に振った。
「ルッツさんが私を連れてきたんじゃありません。私が勝手にルッツさんを追いかけてきたんです。」
そしてにっこりと笑った。
なんて無垢な少女だ。
それでドニは、シャミナードのところに置いてけぼりになったわけだ。
ナーベルがはあ、と息を漏らすと、アナベラは少し笑ってから、また口を開いた。
「それでね、ここからが本題なの。みんな聞いてちょうだい。」
アナベラはルッツのそばで所在なさげに立っていたドニの肩に手を回し、ドニの背後に立った。
「この子は、ラディアン付きの世話係だったそうです。」
いきなりのことに皆驚きのあまり声もでず、ただただ目を大きく見開くだけだった。
「じゃあ…、ラディアンのこと……」
「はい。」
ドニは頷き、くるんとした目でナーベルを見上げた。
「お話します、ラディアン様の身に起こったことを。」