花の魔女
ドニはラディアンが城を抜け出すために協力したこと、城での生活、ドロシーの暗示について全て話してくれた。
そしてシャミナードが闇の精霊を手にしていることも。
「僕がそのことに気づいたのがばれて、闇の精霊に関する本は破られてしまいました。僕はドロシー様に屋敷を追放されて、ここまで逃げてきたんです。」
「そう…なの……」
ナーベルはラディアンにかけられたという暗示のことばかり気にかけていて、その他のことはあまり耳に入っていなかった。
心ここにあらずといった様子のナーベルに、フィオーレが彼女の手を取った。
「大丈夫ですわ、ナーベル様。ラディアン様はあなたを愛しておられましたわ。きっと…、必ず正気に戻ってくださるはずです」
「…ありがとう、フィオーレ」
ナーベルは慰めようとしてくれるフィオーレに弱々しく笑みを向け、視線を落とした。