花の魔女
「闇の精霊が相手なら、ある程度対抗策を練らないといけないな…」
夕食の場で、サイラスが口髭をなでつけながら言った。
野山の雪も解け、次々と草木の芽が顔を出し始めている。
春の訪れ。
それは眠っていた精霊たちが目覚めることを表し、ラディアンとドロシーの婚儀もかなり近い、ということになる。
なんとしてもその前に、ラディアンを奪還しなくてはならない。
今はそのための計画をたてている最中だ。
そんな中、フィオーレがはい、と手を高く掲げた。
「シャミナードの強い魔力の根源は、闇の精霊が力を貸しているからでしょう。レジスよりも先に、その精霊を封じる必要がありますわ。ですから」
フィオーレはそこでちらりと隣に座っているジェイクに目をやった。
目があったジェイクはこくりと頷き、フィオーレはサイラスに向き直った。
「わたくしとジェイクがまず、屋敷へ乗り込みますわ。そして精霊を抑えます。皆様はその間にシャミナードの手の者を」
確かに対抗するにはそれが一番だ。
花の力を持つものがカギとなる。
皆頷いた。
サイラスはぐるりと一同の顔を見て、よし、と腰を上げた。
「決行は明日だ。一日でも早いほうがいい。皆それぞれ準備にとりかかろう。では、解散」