花の魔女
ナーベルは部屋に戻り、明日に向けての精神調整を行った。
目を閉じて、ゆっくり、精神を落ち着かせる。
魔法を使うには、大きな精神力が必要になる。
前のように動揺して魔法を消してしまうようなことがあってはならない。
ナーベルはもう何にも動じないと決心していた。
ドロシーはきっとまたナーベルの心を揺さぶろうと、ラディアンを使ってくるだろう。
だが、もう負けはしない。
ラディアンをこれ以上、好きに操らせるわけにはいかない。
たとえラディアンが自分に刃を向けてきても、ひるまずに立ち向かわなくては。
「いよいよ、明日ですね」
静かな声に、ナーベルは目を開いてゆっくりと振り返った。
ルッツがいつも通り、いつもの場所で姿勢を正して立っている。
「そうね。いよいよだわ」
言いながら、ナーベルはルッツのほうに体を向けた。
そして苦笑すると、首を横に振った。
「本当はすごく怖いの。もし私の力が前みたいに力不足だったら、ラディアンを殺さなきゃいけない、なんてことになりはしないかって」