花の魔女
「大丈夫です。ナーベル様は、あれから確実に力をつけられました。強くなられました。ドロシーでも、今のあなたには敵わないでしょう」
「ありがとう」
ナーベルはふふっと笑って、窓のほうへ顔を向けた。
そこにはルッツが前に摘んでくれたシャワーライトが月の光に照らされて輝いている。
庭のシャワーライトはとっくに枯れてしまったというのに、ルッツの言うとおりこの花は摘み取ったほうが長持ちするようだ。
不思議な花。
「それではナーベル様、今日は早くお休みになられたほうがいいかと思いますので、わたしはこれで失礼します」
言いながら、ナーベルにカップを差し出してきた。
「ジャスミンティーです。早くお休みになれるように」
このような心づかいは、いかにもルッツらしい。
ナーベルはカップを受け取り、ちょっと香りを楽しんでから顔をあげた。
「ありがとう。あなたもよく休んでね」
「恐れ入ります」
ルッツは頭を下げ、そっと部屋を出て行った。