花の魔女
「そろそろ奴らは動き始める頃だろうな」
石畳みの、薄暗く広い空間に低い声が響いた。
その空間にもう一つ、声が響く。
「ええ。もうこちらに向かっているかもしれません…。いかが致しましょう?」
「眠っている精霊たちを叩き起こせ。すぐに式を挙げる」
レジスの言葉に、跪いていた人物は動揺した。
その様子に、レジスはふんと鼻で笑う。
「なに、季節はもう春といっておかしくないのだ。少々早いお目覚めでも、問題はないだろう」
「ですが…」
「行け」
渋る返事にレジスは一瞥し、マントを翻して部屋の奥に消えた。
命令された者はしばらくその場で動かなかったが、やがて意を決して立ち上がった。