花の魔女
シャミナードの屋敷へ向かうナーベルたちは、かすかに周囲に異変を感じとり、馬を止めた。
「何かしら…。何かがおかしいわ」
アナベラが呟くと、サイラスが何かをみつけて馬を降り、眉を顰めた。
そして近くの木の枝を掴むと、舌打ちした。
「どうなさいました…?」
ナーベルが尋ねると、彼は静かに枝をナーベルに見せた。
「…新芽が膨らんでいる。向こうの木には若葉。早すぎるとは思わないか」
「まさか…」
アナベラが手を翳しながら天を仰ぐ。
空には太陽が眩しい光を放ち、輝いていた。
羽織ってきた上着を脱ぎ捨てたくなるようなあたたかい気温。
ナーベルもやっと、サイラスが何を言いたいのかわかった。
「精霊たちが…目覚めてきているのですね」
ジェイクとフィオーレは眉を顰めた。
「そんなはずはない。まだ起きる時期じゃないはずだ」
「起こされてるのよ、無理矢理。きっとシャミナードが何かしたんだわ」
サイラスは馬に乗り込み、手綱をとった。
「急ごう。もしかしたら、間に合わなくなるかもしれない」
その言葉に一同は息を飲み、走り出したサイラスのあとに続いた。