花の魔女



ラディアンは婚礼の衣裳を着せられ、椅子に力なく座って窓の外を眺めていた。


しばらくぶりに見る外の世界は、いつの間にか雪がとけ、春がやってきているようだった。


風に揺れるローダンデの花に、ラディアンはどうしてか胸が疼くのを感じていた。



忘れてはいけない何かを、忘れているような気がする…


それにあのとき、自分が殺そうとした少女。

あの子が自分の名前を呼んだときのことが頭から離れない。


どうしてあの子は、殺されそうになっているというのに愛しそうに名前を呼んだのだろうか…



「ラディアン」


愛しい人が名前を呼ぶ声が聞こえ、ラディアンは振り向いた。


部屋の入口で、花嫁衣裳に身を包んだ黒い髪の女性が照れ臭そうにはにかんで立っている。


「どうかしら…?変じゃないといいんだけど」


「まさか。とても似合ってる」


そう言って彼女の手をとったとき、ズキンと頭に言いようのない痛みが襲った。


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