花の魔女
「何とか中に入れたな」
護衛隊をやっとのことで撒いて、ナーベル達は石壁の後ろに身を潜めていた。
「さて、これからどうするかだが」
「一番右端の塔から嫌な気配がする。俺たちはそっちへ行くぜ」
「わかった。それでは我々は、なるべく塔から離れたところで奴らの気を引こう」
サイラスの合図で、皆一斉に動いた。
ジェイクとフィオーレが塔の方に駆けていくのを見て、ナーベルも同じところへ行きたかったがルッツに止められた。
「だめですよ、私から離れないでください」
ルッツの言うとおりで、どこからか飛んできた矢に危うく当たるところをルッツに腕を引っ張られて助かった。
けれども矢は次から次へと飛んでくる。
「行きましょう」
「え?」
「私たちはラディアン様とドロシーを探すのです。あの二人を相手にできるのは私たちしかいません」
矢をうまくよけながら、ルッツはナーベルを促して走り出した。