花の魔女

塀をぐるりとまわり、手入れされていない中庭に入り込んだ。


荒れた草木の中に隠れながら、ナーベルはルッツを見る。


「でも、どうやって探すっていうの?これじゃ無理よ」


「大丈夫です」


ルッツはある方向をじっと見つめている。


「あちらのほうも私たちを探しているみたいですから」


ナーベルもルッツの見ているほうに目をやると、はっとして身を縮めた。

ドロシーがきょろきょろと辺りを見回しながらこちらに近づいてきていた。


どうしよう、ナーベルがそう思ったとき、ルッツがそっと耳元で囁いた。


「ここに隠れていてください」


そう言うやいなや、ナーベルが止める間もなくルッツは茂みから飛び出し、ドロシーの前に出ていってしまった。


ルッツが突然現れてドロシーは驚いた顔をしたが、すぐに平静に戻った。


「やっとみつけたわ。あのナーベルとかいう女はどこ?あの女を消さないと、私の魔法は完全にかからないの」



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