花の魔女
アナベラはラディアンを見て、軽やかに瓦礫から降りるとカツカツとヒールの音を鳴らしてラディアンの前に立った。
「ラディアン?」
笑顔のアナベラに恐怖を感じて、ラディアンは顔を引きつらせた。
「怪我してるって聞いたのだけど、もう動いて平気なの?」
「ルッツが治してくれましたので」
「そーう」
アナベラが日傘を畳んだのをみて、ルッツが慌てて庇うようにしてラディアンの前に出た。
「応急処置ですよ。本当は安静にしていただきたいのです」
「残念。怪我人に手出しはできないものねぇ」
アナベラは残念そうに日傘を弄びはじめ、ラディアンはルッツに感謝した。
ときどき、この母は容赦無い。
アナベラはふっと笑って、右手でグーをつくった。
「呪いにまんまとかかって女の子を泣かすなんて、まだまだ修行が足りないわね、ラディアン」
コツンと額を小突かれて、ラディアンは額に触れながら俯いた。