花の魔女
「さぁ、着いたぞ」
降ってきたサイラスの声に、ラディアンは目を開けた。
サイラスとラディアンは丘の上に立っていた。
目の前に広がるのは、のどかな田園。
さぁっと風が吹き抜け、草原を揺らしていく。
自分の暮らしていた都とは全く違う、穏やかな風景がそこにあった。
サイラスは驚きでぽかんと口を開いているラディアンを降ろした。
そしてトンとその小さな背中を押した。
「ここからは自分で探すんだよ。女の子は必ずあの村にいる」
そう言ってサイラスが指差す先には、家がぽつぽつと建っている小さな村があった。
ラディアンはサイラスを見上げた。
その目には心配の色が浮かんでいる。
「父様は…?」
心配そうなラディアンに、サイラスはにっと笑ってみせた。
「邪魔するわけにはいかないからな。父様はここで待っているよ。さぁ、早く探しておいで」
サイラスに促されて、ラディアンはサイラスに背を向け、丘を駆け下りた。