花の魔女
その女の子は、一人で小川で遊んでいた。
父に自分で見つけるように言われたラディアンは、村中を探しまわってやっと見つけた女の子の姿に、嬉しさにまかせて駆けよった。
「だあれ?」
人の気配に振り返った女の子は、ラディアンを見て首を傾げた。
見たこともない男の子だったからだ。
じっと見つめてくる女の子にラディアンは緊張したが、勇気を振り絞って声を出した。
「僕はラディアン。君は?」
女の子は一瞬きょとんとしてから、
「ナーベルよ」
と答えた。
「何をしてるの?」
ラディアンは靴を脱いで、小川の中に入っているナーベルの隣に並んだ。
ナーベルはにっこりと笑った。
「今日はね、かえるの結婚式、なの」
「かえるの?」
「そうよ」
見れば、二匹のかえるが仲良さげに小川の淵で跳ねている。
「だから私、お祝いしてるの。幸せになりますようにって」
そう言って足下を流れていく水を少し手ですくいとり、空に向かって勢いよく放った。
キラキラ光る水の粒が、祝福するように二匹のかえるに降り注ぐ。
「わあ」
ラディアンは思わず声をあげた。
彼女のお祝いが、魔法をかけたときのように美しかったからだ。
やがて、かえるはぴょこぴょこと跳ねて二人から離れていった。
「あの二匹、幸せになるといいな」
ナーベルがラディアンに笑顔で言った。
その笑顔が、眩しかった。