花の魔女
花の精霊
「今日こそは合格してみせるわ」
太陽の光が降り注ぐ森の家の庭で、ナーベルは今日も修行に励んでいる。
花を1メートルほど浮かせるようになり、あとは好きな場所に移動させてそれを降ろすだけ。
それだけクリアすれば合格がもらえるのだ。
ナーベルは意気込んで胸の前で小さく手を握りしめた。
「そうすればラディアンに話しかけるきっかけができるもんなぁ」
からかうジェイクの声に、ナーベルはぎくりと汗を浮かべた。
あの夜以来、ナーベルはラディアンとどう接してよいかわからなくなり、悉く彼を避けていた。
ラディアンもそんなナーベルに気を使ってか、修行にはジェイクをつけて自分は森のどこかに薬草を採りに行ってしまった。
「よ、余計なこと、言わないで」
ナーベルは気を取り直して花に集中しようとした。
はいはい、と笑うジェイクも一瞬で先生の顔になる。
その普段は見せないまじめな顔に変わる瞬間、ナーベルはドキリとした。
ジェイクは黙っていれば十分綺麗な顔をしている。
ジェイクに想い人はいないのだろうかと考えたが、集中しろというジェイクの声で我に帰り、花を浮かべた。