花の魔女
花に感激していると、後ろから柔らかな声が聞こえてきて、はっとして振り返った。
立っているのは、花でできたドレスに身を包んだ、美しい、というよりは可愛らしいという言葉がしっくりとくるような、美女。
ナーベルは一瞬みとれてしまったが、あわててぺこりと頭を下げた。
「ナーベルと申します。……あなたは?」
ナーベルが言うと、美女があら、と口元に手を当てた。
「あなたがナーベル様。わたくしは花の精霊、フィオレンティーナと申します。フィオーレとお呼びください」
彼女は優雅に頭を下げた。
動くたびに花の香りが辺りに広がる。
「それにしても、ここは森のはずれでございますわ。森から出てしまわれると、ジェイクの守りも弱まってしまいます。これ以上先に行くのはお勧めできませんわ」
フィオーレの言葉に、ナーベルはかすかに眉を寄せた。
「ジェイクを知ってるの?」
フィオーレはふわりと表情を緩めた。
花が咲いたような笑みに、女であるナーベルもドキリとしてしまった。
「ジェイクはわたくしの夫です。ラディアン様とナーベル様にお仕えしていることは、承知しておりますわ」