花の魔女
ラディアンが夜風でナーベルの体が冷えるのを心配し、家に戻ろうと言おうとしたときだった。
「できた!!」
ナーベルは思わず喜びの声をあげてラディアンを振り返った。
ナーベルが浮かせていた花は、先程とは違う位置で浮遊している。
「やったわ!ありがとう、ラディアン!」
ラディアンは花を見て一瞬驚きの表情を浮かべたが、すぐにナーベルに視線を戻し、ナーベルの頭を撫でた。
「よくやったね」
優しく微笑んでくるラディアンに、ナーベルは目を奪われた。
月に照らされたラディアンは昼間見るときよりも美しく、ナーベルはドキドキしてしまった。
これ以上近くで見ているとどうかしてしまいそうで、ナーベルはラディアンからそっと離れた。
しかし、ラディアンが一瞬寂しそうな表情をしたのに気づいて、しまった、と動きを止めた。
「夜風は体に良くない。戻ろう」
ラディアンはそう言って、背を向けて歩きだしてしまった。
言わなければ。
ナーベルの頭の中で、それだけが鳴り響いた。
今、言わなければ。