花の魔女

「ラディアン!」


力いっぱい、でる限りの声で遠ざかっていくラディアンの名を呼んだ。


反応したラディアンの足がぴたりと止まると、ナーベルは咄嗟に駆け出し、振り向きかけたラディアンに後ろから思いきり抱きついた。



風がザァッと木々を揺らしていった。


「…ナーベル……?」


戸惑いながらラディアンは抱きついてくるナーベルの肩に手を置く。


ナーベルは意を決して顔をあげ、ラディアンの揺れる青い瞳を見つめた。


「私」


口から放つ言葉が震えているのに気づいて口をつぐみそうになったが、ぐっとこらえた。


かわりに、ラディアンにまわした腕に力を込める。


「私、あなたと一緒に魔女になりたい」


顔が熱くなるのを感じて、うつ向こうとした。

が、そうする必要はなかった。


ラディアンに抱きすくめられたナーベルは、ラディアンの胸に顔を埋めた。


「ナーベル」


耳元で優しく自分の名を呼ぶ声に、体が震えた。



星が瞬く夜空の下。



月明かりで地面に落ちた二つの影は、ひとつになった。




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