花の魔女
フィオーレの力
甘い香りに目を開けた。
目の前には息を飲むような綺麗な顔。
すやすやと眠る美女は、恥ずかしげもなくその寝顔を窓から差し込む明るい光の下にさらしていた。
起きた直後にフィオーレの美貌を目にして、心臓がドキリと跳ねてしまった。
これがラディアンだったらそれどころじゃないだろうと思いつつ、昨夜はどうしてもナーベルと一緒に寝たいというフィオーレの願いを聞き入れて、一緒に寝たのだということを思い出した。
ジェイクは少し残念そうな顔をしていたのだが。
フィオーレを起こさないようにそっとベッドをすり抜け、部屋を出た。
一階に下りると、ラディアンとジェイクはもうとっくに起きていて、二人で談笑していた。
ナーベルは二人の楽しげな様子に笑みを浮かべて、肩にかけていたショールを外しつつ二人のもとへ歩みよった。
「おはよう、ナーベル」
ナーベルに気づいたラディアンがこちらに顔を向けた。
「おはよう。そんなに楽しそうに何を話してるの?私もまぜてもらえるかしら」
ジェイクはにやりと意地悪く口端をあげてナーベルを見た。
「フィオーレの頑固さについて話してたんだ。こういう話は、あいつが寝てるうちじゃないとできないからな」