花の魔女
「あら?ラディアン、あなた髪が長かったの?」
ラディアンの金色の髪は、腰の辺りまで伸びていて、後ろでひとつに束ねてあった。
ラディアンがこちらを向いて話していたので、横を向くまでわからなかったのだ。
「ああ、これ?」
ラディアンは自分の髪に手をやり、髪を束ねていた髪留めを外した。
金色がさらりとこぼれ落ちる。
「邪魔だから、いつも魔法で短くしてるんだ。今日は忘れてただけ」
そう言って髪に触れると、みるみるうちに髪は短くなり、いつものラディアンの髪型に戻った。
「邪魔なら切ればいいのに。私が整えてあげましょうか?」
「いや、それは……」
「だめだめ、こいつの髪は切ったらだめなんだ」
クッキーをサクサク食べていたジェイクが、手についた粉をはたき落としながら言った。
「だめ?どうして?」
「心配性の母上様が、ラディアンに何かあったときに髪を切ることを合図として居場所を知るまじないをかけたのさ」
「小さい頃の話だよ。今もまじないが有効かは分からないけど、念のためにね」