花の魔女
サァッと風が吹くと水面が風にあわせて揺れていく。
「うわあ……」
目の前に広がる澄んだ泉に、ナーベルは飛び跳ねて喜んだ。
「泳ぎたくなるわね」
「それだけはやめて」
ラディアンが困ったように眉を下げるので、ナーベルは泳ぐことは諦めた。
しゃがみこんで水の中を覗き込むと、泉の底が見えるくらい、水は透き通っていた。
ゆらゆら揺れる水草や、優雅に泳いでいく魚たちをうらやましそうに見つめていると、ジェイクにぺちんと頭を叩かれた。
「こら、遊びに来たんじゃないんだぞ。ラディアン、お前もちゃんと面倒を見ろ。目を離すな」
まるで小さい子どものように扱われてナーベルはむっとしたが、フィオーレがやっつけてくれたのでそれでよしとした。
しかし遊びではないと言われたことを疑問に感じて、フィオーレとジェイクのケンカを傍観しているラディアンのところへ行った。
「遊びじゃないんだったら、一体何をしに来たの?」
ナーベルの質問に、ラディアンはああ、と説明してくれた。
「ナーベルは昨日第一段階をクリアして、魔法のコントロールは大体できるようになったから、今度からはこの場所がいいと思って。今日からここで修行するんだよ」