花の魔女

もう一人の魔女


ドニの軽やかに駆けてくる足音が聞こえ、ラディアンはベッドの上に横たえていた体をむくりと起こした。

案の定、ラディアンの部屋の鍵を開ける音がし、ドニが中に滑り込んできた。


「ラディアン様、新しい情報を仕入れてきましたよ!」


息を切らして自分のもとへ寄ってくるドニの目は、自分がラディアンの役に立てることが嬉しいらしくキラキラと輝いている。


「へぇ、どんな?」


ラディアンはそんなドニに優しく尋ねた。


「ラディアン様の婚礼の話です。『春の日の、精霊たちが月を輝かせる日』だというのが噂です」


ラディアンはやはりそうか、と心の中で呟いた。

ということはまだ、時間がある。


なんとかしてここから脱出できないだろうか……いやそれではナーベルの身が危ない、などと思案していると、突然ラディアンの部屋の扉がガチャリと開いた。


ラディアンとドニは驚いて扉に目を向けた。


今までこの部屋にはドニ以外の者が入ってきたことがなかったのだ。


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