花の魔女
「ラディアン様……」
呼びかけてもラディアンはドニの方を向きもせず、床の一点をうつろに見つめていた。
ゆすってみても反応がない。
ドニはラディアンの様子がおかしいことに気づき、まさか、と息を呑みいましがた出て行ったドロシーのあとを追った。
ドロシーは階段を半分ほど降りたところでラディアンの部屋を振り返り、にやりと口端をあげた。
すると、その部屋のドアが勢いよく開き、さっきまで怯えて震えていた少年が飛び出してきた。
(確かドニ、だったかしら)
少年は厳しい顔つきでドロシーの降りている階段の上まで走ってくると、ドロシーを睨みつけた。
ドロシーはあら、と意外そうにドニを見上げた。
「ラディアン様に何をしたんですか!」
自分を見下ろして、必死な顔で叫ぶドニを、ドロシーは余裕の表情で見る。
(面白いわ。さっきまで震えていたくせに)
「心配しなくていいわよ。ちょっと暗示をかけただけだもの」
「暗示……?」
ドニは眉を顰めた。
ドロシーは口元に手をやり、くすくすと笑った。