花の魔女
めそめそとナーベルの手を握りしめたまま涙ぐむフィオーレにどうしていいかわからず、おろおろと視線をさまよわせるしかなかった。
ジェイクに助けを求めても、肩をすくめられるだけだ。
ナーベルはとりあえずフィオーレの顔を覗き込んだ。
「あ…、あの……」
「だからこそですわ!」
そしてまたフィオーレが叫び、耳がキンと鳴った。
「だからこそ、わたくしは奴らを絶対に許しません!懲らしめてやらなくては気がすみませんわ!さぁ、ナーベル様、こうしてはいられませんよ、今すぐ修行を再開しましょう!」
「えっ、ええっ!?」
フィオーレはナーベルの手をしっかりと握ったまま、勢いよく部屋を飛び出していってしまった。
手を握られたままのナーベルはなす術もなく、半ば浮かんでいるような状態で連れ出された。
ジェイクは風のように飛び出していったフィオーレにぽかんとしていたが、やがて柱にもたれかかり、やれやれと額に手をやった。
「こりゃ、起こさないほうが良かったかもな……」
しかし、その表情にもうさびしさは残っていなかった。