夏の幻
夏の幻
……………
世話しなく蝉が鳴く。
ペダルを押す足にもじんわりと汗を感じる程の夏の日射しは、容赦無く俺の頭上に降り注いでいた。
…いい加減地球やべぇだろ。
溶けてしまうというより蒸発してしまいそうなこの暑さのせいで、思考も地球規模になってしまった。
ヤバいのは俺の頭か。
だいたいこんな暑さで勉強なんか頭に入るわけがない。
それでも毎日夏期講習に顔を出しているのは、そうでもしないと落ち着かない受験生の悲しい性だろう。
早くこの勉強地獄(という程勉強してるわけでもないが)から解放されたいと願うものの、この夏は永遠に続くように思われる。
だんだんと沈む思考を持ち上げるためにも、僕はサドルから立ち上がって何かに立ち向かうようにがむしゃらにペダルを漕いでいた。