内緒の想いを抱きしめて

先輩!



向かい側には先輩が座っていた。

ぱっと目があって、思わずそらしてしまった。


うわっ、どうしよう。
絶対顔真っ赤になってる。
いやだ……


それでも電車は走っていく。

電車に揺られている間中、きっとわたしの顔は真っ赤で
相変わらずケータイをつきつけてはメールを自慢する杏奈ちゃんの話なんか聞いてるふりして、
ちっとも聞いてなんかいなかった。




先輩はわたしたちと同じ駅で降りた。

わたしたちも先輩も、乗り換えないといけないけど方向は逆。

ホームでは、
杏奈ちゃんはメールに夢中。
わたしは先輩に夢中。


たまに先輩と目があったりした。


…かっこいい。
ドキドキしてる。

この時間がずっとずっと過ぎなければいいのに。

数少ない貴重な時間……



それでも時間は過ぎていく。


発車した電車の中で、わたしに残ったものは切なさと幸福感。


先輩に会えるだけで、わたしの一日はどんないやなことがあったとしても
幸せだったことに、
なる。


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