内緒の想いを抱きしめて
乗り換えの駅のホーム。

お互い違う方向だけど、先輩は一緒にいてくれた。

でも、
何でかわかんないけど、何も喋らなかった。


沈黙が、いやだった。


何で話してくれないんだろう、
わたしから話題を探さないと…


焦っていると、ふいに先輩が口を開いた。


「知ってたよ」


「え…?」


何のこと…




「ずっと、見てたよね。俺のこと」




息を飲んだ。




「見てたの…気づい…てたんですか?」


先輩はしっかりこっちに向き直った。


「ほんとのところの、君の気持ちはよくわからないけど…」



プァーン…カダンゴトン…



先輩が何か言いかけたとき、電車がきた。


「………」


「せっ、先輩…」


必死で先輩の瞳を探した。


先輩は黙ってこちらを見ている。
優しい、顔で。


「…早く乗りな。電車行っちゃうよ」


先輩はわたしの背中を押して電車に乗せた。



先輩……
何か言いかけてたのに。




ドアが閉まった。

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