内緒の想いを抱きしめて
朝の、まだ人がいない小さな公園。

ふたりでブランコに座って、杏奈ちゃんが泣き止むまでキィキィ漕いだ。


「……急ぎすぎちゃったんだ」


杏奈ちゃんが呟いた。
わたしは杏奈ちゃんの横顔を見つめる。


「いつもいつも、早く早くって。早く進みたかった」

「……」


わたしは、月明かりの中でどんどん先に走っていく杏奈ちゃんを思い出した。


「そしたら、いつの間にか変なところに迷いこんじゃった」

「杏奈ちゃん…」

「不思議だね。あんたはいつもあたしと一緒にいるのに、あたしみたいにならないし、あたしはあんたみたいにならないのね」

「?」

わたしはブランコを止め、杏奈ちゃんの目を探った。


「あたしは……あんたみたいだったらよかったと思う」


今度は杏奈ちゃんがブランコを漕ぎだした。

ゆらゆら揺れる杏奈ちゃんをゆらゆら見つめる。


「ゆっくり、ゆっくり進んでいくの」


そう言って、こちらを向いて笑った顔はいつもの杏奈ちゃんの笑顔。


「あたし、気づいてるんだからね」


杏奈ちゃんがにやりとして言って、
何を?って顔をしたわたしの頬をつんっとつついた。


「とぼけんなよ。好きな人いるでしょ」








えっ、





何でばれた………の?





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