優しい本音で、溶かして。


「これからもお姉ちゃんのこと、よろしくお願いします」


披露宴が終わり、雅人さんにそう言って頭を下げた。


「乃恵ちゃんありがとう…絶対礼奈のこと、幸せにするから」


「はい…」

雅人さんの顔は、希望に満ちていた。

そんな雅人さんを見ると、胸がチクリとした。


「じゃあ、あたしはこれで…!」

あたしは、雅人さんに背を向き、歩き出した。


「あっ、乃恵ちゃん…」


雅人さんの声が、背中に降ってきた。



だけどあたしは、振り返ることなく、歩き続けた。


振り返っちゃ、駄目。

感情が、溢れ出すかもしれないから。

涙をこらえながら、会場を早足に出ていった。




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