優しい本音で、溶かして。
会場を出ると、小澤さんが、木にもたれ掛かりながら、煙草を吸っていた。


「小澤さん…」

小澤さんに声をかけると、

「乃恵ちゃん…」

小澤さんはフッと笑みを浮かべた。

そして、煙草を靴ですりつぶすと、こちらに歩み寄ってきた。


「小澤さん?」

「…」


小澤さんは、ただ一点にあたしを見つめている。

何となく、どきどきしてしまう。






「泣きなよ」




小澤さんはそう言うと、突然あたしを抱き締めてきた。

温かい…


目尻が、じわりと熱くなったのを感じた。

あたしはそのまま、小澤さんの胸を借り、泣いた。


幸い、外にはあたしと小澤さんしかいなく、あたしは周りを気にせず、泣いた。



雅人さんは、お姉ちゃんしか見ていない。

今日、それが痛いほどわかった。



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