優しい本音で、溶かして。
傷と笑顔
「赤ちゃん、順調?」
お姉ちゃんと雅人さんが結婚して、1ヶ月がたった。
もう、季節は初夏を告げている。
「うん!予定は10月だって」
お姉ちゃんは、幸せそうに微笑んでいる。
母親の顔だ。
今日、あたしはお姉ちゃんと雅人さんが暮らすアパートに来ている。
「生活には慣れた?」
「うーん・・・大分慣れたよ」
「・・・・そっか」
この1ヶ月、必死に努力した。
雅人さんに対する恋心を忘れようと・・・
だけど――。
「あれ?乃恵ちゃん来てたんだー!」
その時、雅人さんが帰ってきた。
「あ、はい」
「おかえり雅人!」
お姉ちゃんは満々の笑みで雅人さんに寄って来た。
「おいおい、あんまり動き回るなよ」
「分かってるって~」
・・・正直、辛い。
分かってる。
心の中では、分かってるんだ。
雅人さんに対して恋をしていけないことくらい。
だけどね、ブレーキが利かないんだ。
どうして・・・かな?