飴色蝶 *Ⅱ*
「じゃあ、俺は帰るよ」

「イオリ、今日は
 泊まっていけないの?
 ・・・・・・
 何言ってるんだろう私、私達
 別れるかもしれないのに」

庵は、それ以上、何も語らずに
玄関に座り、ブーツを履く。

その後姿は、とても寂しげで
切なくて見つめていられない程
に、菫の胸は酷く痛んだ。

イオリが、行ってしまう・・・

この部屋を、出て行ってしまう

本当に、彼と別れることなんて
私にできるの?

ブーツを履き、立ち上がろうと
した庵の背中に

菫は抱きついた。 

「貴方の言うとおりにする
 
 だから、別れるしかない
 なんて言わないで
 
 足手まといだなんて・・・」

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