飴色蝶 *Ⅱ*
そして、その箱を

手にとって見る

「スミレちゃん、これって・・
 あなた、妊娠しているの?」
 
「あっ、さっき調べたばかり
 なんですけど、陽性反応が
 出たので、妊娠してるんだ
 と思います」

朱莉の顔色が一瞬、曇る・・・

何故なら、今でも庵と別れた事
を後悔している彼女にとって
菫の妊娠の事実は、ショック
以外の何物でもない。

「シュリさん・・・」

朱莉の頬を綺麗な涙が伝い
地面に零れ落ちた。

「ごめんなさい、あの人の事
 忘れようとしているのだ
 けれど、なかなか
 忘れられなくて・・・・・」

朱莉の涙の意味を

朱莉の本当の想いを

聞いてしまった菫の心は
ひどく動揺する。

菫は、庵が心から朱莉を愛し
大切にしていた事を

間近で見て、知っている。
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